005 モモンガくらぶ

人づくりを通じて地域に貢献する、活気とにぎわいをつくるそのきっかけを提供したい

登別市の人里離れた場所で、施設の運営管理と自然活動・子育て支援・人材育成などのプログラムを提供する「モモンガくらぶ」。その基本的な考え方や、来てほしい人材像などについて理事長に語っていただきました。

松原條一(まつばら・じょういち)
NPO法人登別自然活動支援組織モモンガくらぶ理事長
1946(昭和21)年、芦別市出身。
JR貨物の鷲別機関区運転手として勤務。
労働組合活動などを経て、登別山岳会で登山を楽しむ傍ら、
山岳会理事長の縁で市民懇話会の一員として「ふぉれすと鉱山」の設立に関わる。
2002年(平成14年)任意団体モモンガくらぶ会長就任。
3年後に法人化。理事長就任。

「ふぉれすと鉱山」のロビーにて、松原條一さん

「ふぉれすと鉱山」のロビーにて、松原條一さん

公共施設に活気をもたらす成功事例として

登別市の鉱山地区はまちから10㎞ほど離れた山間部にポツンとあります。
ここは、1906(明治39)年に硫黄や金・銀が産出される「幌別鉱山」として開業。最盛期には人口1,300人を超える人でにぎわっていました。
しかし、生産の縮小で1973(昭和48)年に閉山。68年の歴史に幕を閉じ、人々が去り、過疎地域になってしまいました。
その後15年余りを経た1994(平成6)年、ふるさと創生1億円基金の使途を検討する中で、ネイチャーセンターの必要性とこの場所をなんとかしようということから「鉱山の自然の村づくり構想」が提言され、最終的に2002(平成14)年、閉校した鉱山小中学校を増築する形で社会教育施設「登別市ネイチャーセンターふぉれすと鉱山」が誕生しました。
当初は登別市の直営でした。
私たちは市民の任意団体として活動やサポートに参画し、3年後にはNPO法人化。
2007(平成19)年には、ふぉれすと鉱山の指定管理者になり新たに出発しました。
設立当初から、メンバーの得意分野を活かした自主事業も展開し、サービスの質向上を目指して独自の人材育成制度としてガイド養成講座もスタート。この中から新たな人材も発掘し、プロ意識を高めてきました。
市運営時代には環境保護的思想が強くバードウォッチングなど観察系が多かったのですが、指定管理者として活動を進めていく中で遊びの要素を多くプラスし、沢登りやトレッキング、キャニオニングなどアクティブなものを多数取り入れ利用者を増やしてきました。

現在の主な活動分野は5つです。
①地域づくり ②自然活動 ③子育て支援 ④人材育成 ⑤指定管理委託。
1年間に400を超える自然体験活動プログラムなどを実施し、0歳児から高齢者までを対象に、年間2.5万人の方々に参加・利用をいただいています。
今年でちょうど丸10年を迎えました。
市民ボランティアが法人格を取得し、公共施設に活気を生み出した貴重な成功事例として「道新げんき大賞」なども受賞させていただきました。
地域づくりの成功事例として紹介されることも多く、全国各地から視察に見えられることも多くなりました。

子どもだけでなく、大人も大いに遊びます。ご一緒しませんか?

子どもだけでなく、大人も大いに遊びます。ご一緒しませんか?

私たちの活動特長の一つに、「直接指導をする」ということがあります。
道内各地にある自然教育施設系の多くは、ハコや場所を貸し出して、あとは自分たちでどうぞご利用ください、というやりかたが多いとも聞きますが、私たちは申込者とまずは打合せをして、どういうことがしたいのか。目的は何かをヒアリング。その上でこういった各種プログラムを提案し、リスクの共有、プログラムの確認をしつつ下見を経て実施します。
とても手間のかかることをしていますが、それが評価され、最近では、地元を含めた近隣からの小中学校からの受け入れも多く、今年は近隣市町村から50校ほど受入れました。遠方だと札幌や函館からの利用もあります。
特長の二つ目に、「異世代交流の場がある」ということがあります。
展開する様々なプログラムは、対象年齢が0歳から高齢者までと幅が広い。子どもからシニアまでいろんな年齢の人が集まります。
ここに来て育った子は、みんな“いい子”になってほしいと考えています。自然の中で自立して育つ。自分で考えて活動してほしいというアプローチをとっていることもあります。
「自分のことは自分で」というのが基本的な考えです。

貸し館としては、2段ベッドの8人部屋をメインに最大で80人が泊まることができる宿泊棟のほか、調理室や食堂などがあります。
渡り廊下の先には、図書館や木工室、木の砂場などもあります。
また、屋外にはいくつかの手づくりのログハウスがあり、活動の幅を広げています。
私たちは登別市から委託をうけて運営していますが、登別だけではなく、近隣の市町村、室蘭や伊達などからの利用者も多く受け入れています。
地域づくりを思想の根底に持ちつつ、人づくりの部分も重要視して運営しています。
一定程度、この理念に共感いただいた人には、今度は、ボランティアとしてサービスを提供する側に回ってもらいます。
こうして人づくりの循環につながっています。利用者から提供者へができるところです。

旧教室を利用したスタッフルーム

旧教室を利用したスタッフルーム

目的意識が明確な人に来て欲しい

スタッフは現在7人です。
新人が入るとすぐに現場に出て実践してもらいます。
いろいろなトレーニングを積んでもらい、だいたい半年後には1人立ちしていきます。
その後3年くらいで一人前になりますね。
ウチはアウトドア業界が初めてという人も多いです。
求めている人物像は、自分のやりたいことがハッキリしている人。
野外活動に関心があり、マネジメント能力がある人を望んでいます。
何のために仕事をしているのか。目的意識がハッキリとしていないと長つづきしないですね。
一方で、運営側の課題としては、アウトドアガイドとして将来に渡ってずっとやっていけるように賃金の底上げにも取り組んでいきたい。
長く続けられる職業として確立できるようにしたいのです。
プロガイドとして活躍し、適正な収入を得て安定的な生活ができ、結婚や住宅が購入できるようにしたい。
子どもたちから憧れの職業にしたい、と思っています。

地元新聞の元旦特集号に大きく掲載された

地元新聞の元旦特集号に大きく掲載された

組織の成長としても、やっぱり人材育成がカギだと思っています。
若手の育成をメインに現場ができる人を固めて、その上で、マネージャークラスが不足しているので、そこをカバーしていきたいです。
運営をはじめて10年が経過しているので、当時子どもだった利用者さんが大学生とかの年齢になってきています。
この人たちにも今後、関わってもらえるとうれしい。
今後の事業展開では、自分たちで稼ぐための場を整備することも取り組んでいきたいと思っています。

ボランティアは200人くらい登録していて、子育て中のお母さん達が数多く活躍しています。
ウチは各自のやりたいことが実現できる場所。
ボランティアの方がスタッフより経験が長い人もいる。
スタッフとしては、より高いプロ意識を要求されます。
独立していった人はまだいませんが、今後は、バックアップしていきながらお互いにいいかたちになるようなことも模索したいと思っています。

利用人数に関しては、これ以上の数を求めようとは思っていません。
むしろ今後も同じような数を維持していこうという方向性です。
数を伸ばすより、質を高めていきたい。新たに訪れた方が繰り返し来てくれることを重視していく考えです。

自然系やマネジメント系の本が並ぶ通称「社長室」で

自然系やマネジメント系の本が並ぶ通称「社長室」で

「登別の夢の国」にするために

ゆくゆくは、ここの場所にちっちゃなマチが復活することを夢見ています。
自然の中で暮らしたい人が集まり、拡大路線ではなく地味ながら、そのきっかけをつくっていきたい。
時間をかけてじっくり、地に足をつけていうことが基本路線です。
活動の根っこは、「いかに地域に貢献できるのか」ということ。
いい世の中にしていくことが目的です。そのために人づくりがあります。最終的には宇宙平和です(笑)。
地球ではなく宇宙。みんなが仲良くなれることです。
今後は、ここに幼稚園ができ、福祉系のサービスを導入し、なにか新しいことが生まれるような「きっかけづくり」をしたい。
人が集まる場になってほしいと思います。
ここはかつての記憶が残る、郷愁のある場所。土地が有する、自然とつながるパワースポットなのです。
山があり川が近く、温泉や滝がある。自然体験するには恵まれている場所です。わざわざ来たい人が集う場所。だから、来た人たちはひとつになれる。

何度も足を運ぶ利用者に言われたことがあります。「ここは私にとって夢の国です」と。

 

 

撮影・文 花岡俊吾(北海道体験.com)

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