001 ワイルドムスタングス

お客様第一の運営で、乗馬の可能性を追求していく

札幌市の南区、八剣山の麓に西部劇の世界観を作りあげた乗馬施設があります。ウェスタン式の乗馬を提供する「ワイルドムスタングス」。同社代表にこれまでの道のりと、今後の展開について語っていただきました。

山岸晴二(やまぎし・せいじ)
(有)ワイアット・アープ代表取締役
1971年(昭和46)年、函館市生まれ。
プリンスホテル勤務時に新規事業として乗馬施設に関わり
1997年、独立・開業。

事務所建物の中で、「ヴィンス」こと代表の山岸晴二さん
事務所建物の中で、「ヴィンス」こと代表の山岸晴二さん

ホテルマンから乗馬運営へ

函館出身で高校卒業後、道南の「大沼プリンスホテル」に入社しました。
配属前のいわゆる新人研修で、客室係やフロント、レストラン部門など、ホテル業務の基本を一通り経験しました。
研修が終わり、自分の配属希望を伝えるアンケートというものがありました。「我が社はどこへでも、希望地で働くことができます」と。
どこでもいいですと答えたところ、「ニセコ東山プリンスホテル」へ配属になりました。

社会人のスタートは、ゴルフ場のレストラン担当になりました。半年間、ウェイターをやっていました。

西部劇のセットのような受付棟にて
西部劇のセットのような受付棟にて

そんなある日、会社の新規事業でニセコに乗馬施設を作るというプロジェクトが立ち上がりました。
日高のケンタッキーファームと共同の事業。
その時も希望を聞くアンケート記入があり、第2希望で「乗馬」と書きました。
そうしたら、乗馬希望者は自分だけだったとのことで、「明日から乗馬部門に行ってくれ」ということになりました。
実家が酪農家だったので、牛とか動物にはふれていましたが、馬には全くふれたこともなかったのです。
そんなところからのスタートでした。

冬はその乗馬施設がクローズするので、日高の研修先へ行ってくれと。まるまるひと冬、みっちりと乗馬の仕事に従事しました。
その後、夏はニセコ、冬は日高と、馬に接する日々が始まりました。
しかし一転、今度はホテルの新館を建てるということになり、乗馬施設を休業させることになってしまいました。
その間、仕事がないので1年間、まるまる日高で乗馬の仕事をすることになりました。

結果的には、日高で道内の乗馬関係者の間では知らぬ人はいないほどという師匠に5年程お世話になり、直接いろいろなことを教わりました。
師匠からは、馬の世話が第一ではなく、大切なのは常にお客さん目線に立てということを教わりました。
師匠はブリティッシュスタイルだったので、私の馬術ベースには、このブリティッシュの血が受け継がれています。
しかし、お客さん側から見ると、入口として入りやすいのはやはりウェスタンスタイル。なので、ここでは現在の形態をとっています。

女性スタッフによるレッスン風景
女性スタッフによるレッスン風景

ホテルが運営する乗馬施設は、広い馬場の中でお客さんをただ乗せるスタイル。
私はそれでは顧客満足度は低いと思い、外に出て、ランチを出してといった内容にしたいと思っていました。
「ワイルドライド」という商品名で、付加価値を付けてということを支配人に提案しました。
当時、そんなことをやる乗馬施設はありません。そんなリスクを冒したら、事故の元だからということであっけなくNG。
馬さえしっかり調教されていれば、落馬もないだろうし、鞍数で乗せることも必要ないとも思っていました。

趣味のクラブ化から独立

運営主体のホテル側でダメだということで、ホテル勤務の身でありながら、「趣味のクラブを作ってやろう」と思い、「ワイルドムスタングス」という名前で、外乗り乗馬をやり始めることにしました。
4~5頭馬を貸してくれる人も現れ、徐々に、自分でやったほうが面白いなあと思うようになりました。
そんなこともあり、少しずつ馬を買い、独立の準備を始め、プリンスホテルを退職。
退職金はすべて馬を買うのに注ぎこみました。
その馬たちは八雲の知り合いのところに預けていたのですが、1頭がクマに食われるという事件がおきました。
そこで急きょ、預ける場所を変えなければと。馬を置ける場所を探し始めました。
当時、妻が札幌で働いていたこともあり、札幌とニセコを行き来しており、国道230号線を通っていて、たまたま立ち寄ったこの山の麓がいいなあと思いました。
近くで農作業をしていた地主さんに「馬とか置かしてもらえませんかねえ〜」とお願いして、最初は渋い顔をしていたんですが、結局、何度も通ってOKもらいました。
自分が27歳の時です。
それまで使っていたサークルの屋号「ワイルドムスタングス」をひきつづき使って看板を掲げ、個人事業としてスタートしました。

人気のコース、八剣山をバックに
人気のコース、八剣山をバックに

看板を出して事業をスタートさせましたが、お客さんはまったく来ませんでした。
2人ほどバイトを使っていたのでお金はどんどん無くなっていきます。
2〜3年たった頃、このままではヤバいなあと本気で考え始めたその時、ニセコにあるアクティビティー複合施設の人が来て「ウチの乗馬施設をプロデュースしてくれないか」という願ってもない申し出をいただいたんです。
このことをきっかけに会社は息を吹き返しました。

良く知ったニセコという土地柄での乗馬コンサルティングは順調に推移しました。
結果、施設は大繁盛となりました。
けれど、そのあげく今度は、「自分たちで運営する」ということになり、私たちは撤退。
結局、紆余曲折の末、昨年まで10年間の契約を結ぶこととなるわけですが。

002 ワイルドムスタングス
日高で名師匠の元で学んだことが今、活きています

現在、ここには馬が12〜13頭います。
目指す乗馬スタイルは、純粋にエンターテイメントを追求することです。
冬は千歳のノーススノーランドという雪遊びの会場内で。支笏湖でロングラン開催される、氷濤まつり会場で。
ここの拠点と合わせて3カ所で馬に親しむ事業を展開しています。

コース開発とタイアップ商品の開発へ

これからはアドベンチャーコースを伸ばしていこうと思っています。
初めて馬に乗る人でも満足感の高い、1〜2時間の森林コース。
こういった少し難易度の高いコースを任せられるスタッフが5名以上いるような状態がベストでしょうかねえ。
一方で、子ども向けの引き馬体験みたいなものも、これは絶対に必要だと考えています。
こちらは将来のファン作りの要素もあると思っています。

なんだかんだと、多くのお客さんが集まり動いている大都市札幌に近いということは強みの一つ。
そのすぐ近くで満足度が高い、リピートされるような次なるコース開発が課題だと思っています。

麓の果樹園ともコラボする
麓の果樹園ともコラボする

今、支笏湖のホテルとタイアップした商品を売り出しました。
ブライダルをターゲットに、馬に乗って写真を撮影するという企画も動いています。
定山渓近くの果樹園では、馬の世話を通したセラピーのようなことができないかと構想しています。
豊平川の河川敷にあるサイクリングロードでも乗馬ができればいいですね。
今、北海道も札幌市も、全体として外国人を中心に観光振興に力が注がれています。
行政機関ともうまく連携して、これまでにないコース開発ができればと思っています。

 

 

撮影・文 花岡俊吾(北海道体験.com)

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